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浦和家庭裁判所 昭和45年(少)2155号 決定

少年 Y・Z(昭二四・一〇・二六生)

主文

本人Y・Zを中等少年院に送致する。

右少年院収容期間を一年間と定める。

理由

本人は、昭和四三年八月三〇日窃盗、虞犯の非行により東京家庭裁判所において保護観察に付され、さらにその後犯した恐喝、暴行、虞犯の非行により昭和四四年八月二七日同裁判所において再度保護観察に付する旨の処分を受け、現に浦和保護観察所の観察下にあるものである。

(少年法三条一項三号該当の事由)

右再度の保護観察決定を受けた後、本人は埼玉県新座市の実父母のもとに帰任することになつたが、勤労意欲に欠け、右実父母、保護観察担当官の指導、監督にもかかわらず、職を転々と変え、欠勤等も多く、そのために小遣銭に窮するや実母等に金銭を強要し、時には家財を持ち出して入質し、また従前からの鎮痛剤嗜癖が増々高じ、これを多量に服用しては家族の者等に粗暴な振舞を繰返し、二度にわたる精神病院入院によつても右嗜癖は改善されなかつた(右事実は少年法三条一項三号イ、ニに該当する。)ものであつて、このまま放置するにおいては後記の本人の性格、環境に照し、将来罪を犯す虞れがあるものである。

(処遇理由)

当裁判所は昭和四五年九月一〇日審判を実施したうえ、本人を在宅試験観察に付し、その後の行動等を観察してきたものであるところ、前記の行動傾向はほとんど改善されず、実父等家族の者も本人の指導、監督に手を焼き、施設収容を強く希望している現況にある。

鑑別結果によると、本人の知能はI・Q七五の限界域にあり、その性格は、対人関係において感受性、共感性に乏しく、自己中心的であり、日常生活における行動は場当り的、なげやりで持続性に欠ける等その偏りが顕著なことが明らかである。

一方、本人の家庭は、年老いた実父母以外の同胞はそれぞれ別居していて、本人の更生に力を藉そうとする者はなく、右実父母も前記のとおり全くその自信を喪失するに至つている。

以上の事情に鑑みると、在宅処遇をもつて本人の前記性癖を矯正することができないことは明らかであり、この際矯正施設に収容するほかはないこと明白である。

そこで、本人を収容すべき施設について考えるに、本入はすでに満二〇歳をこえているものではあるが、未だ収容歴がないこと、犯罪的傾向もさほど進んでいるものとは認められない等に鑑み、中等少年院が相当と思料する。(少年院法二条三項は「中等少年院は……おおむね一六歳以上二〇歳未満の者を収容する。」旨規定しているが、この規定は「中等少年院は……おおむね一六歳以上おおむね二〇歳未満の者を収容する。」と読むべきものと解する。)もつとも、処遇上の困難がある場合は、少年院法一〇条により、特別少年院等適切な施設への移送を考慮されたい。

なお、少年院収容期間は本人の年齢、その他右各般の事情を考慮し、向う一年間と定める。

よつて、犯罪者予防更生法四二条二項、三項、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 尾方滋)

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